domingo, 16 de junio de 2019

19A

19.白雪姫、散る  〔公開セックス・集団全裸〕

「それじゃ、うちのクラスの出し物は『白雪姫』に決定します」

 この学校では、年に何度か地域の高齢者施設にボランティア訪問に行ったりする。入居者のみなさんと一緒にごはんを食べたり、出し物を見せたり。

 時期や場所はクラス毎に分かれて行われ、出し物も各クラスで考えて発表しているそうだ。だいたいが紙芝居や歌の発表なんだけど、うちのクラスでは玲奈さんや杏実さんが積極的に発言してくれて、演劇と紙芝居が融合した『ハイブリッド芝居』という斬新なジャンルが生まれたところだ。

 白雪姫と王子様の主役二人が前で演技して、その他のストーリーや脇役は紙芝居でやる。

 確かに舞台や控室があるわけじゃない施設では、大人数でお芝居なんて出来ない。場所も道具も少なく済ませ、かつ普通の紙芝居よりも楽しそうなあたりが素晴らしい。このエコとエンターテイメント精神に溢れる創意工夫は、杏実さんのアイディアだった。

 僕は板書係をやってくれている副委員長の方を見る。そして微笑みあう。最近、彼女とは目と目で通じ合うことが出来るんだ。

 副委員長は黒板に『ハイブリッド芝居 白雪姫』と書いた。これで決定だ。

「じゃあ、役割分担を決めていきたいと思います。最初は主役を演じる二人から。決める方法は―――」

「はーい、推薦でいいと思いまーす」

 杏実さんが手を挙げてすかさず言う。

 えっと、まだ僕の進行の途中なんだけど。

 なんだか変だな。ハイブリッド芝居のアイディアには感心したけど、そういえば、さっきから玲奈さんと杏実さんだけ発言していて他の人の声が聞こえない。それどころか、男子はつまらなさそうにそっぽ向いてるし、女子も気まずそうにしているだけだ。

 やっぱり、さっきの休み時間に何かあったのかな?

 またみもりさんのパンツを洗いに行かされて、帰ってきてから教室の空気が何かおかしいんだけど。

 こっそり僕の手伝いについてきてくれて、一緒にパンツを洗ってくれた副委員長も、「なんかおかしいね」って言ってたし。

 僕は副委員長の方を振り返る。彼女もちょっと首を傾げていた。

「えっと、じゃあ、誰か推薦の―――」

「はーい」

 次は玲奈さんが手を挙げる。他の人が挙げる気配がないので、仕方なく僕は玲奈さんをあてる。

「白雪姫がみもりで、王子様は委員長がいいと思いまーす」

「え、僕?」

「やっ、やだぁっ、私が白雪姫なの!? しかも委員長が王子様なんて!」

 がたんと机を鳴らして、みもりさんが真っ赤になって顔を覆う。

 他の人からは意見が出ない。しんと静まり返る教室の中で、みもりさんだけが恥ずかしそうに「ウソでしょぉ?」なんて言ってる。

 みもりさんも嫌がっているし、僕も出来れば王子様なんて恥ずかしくてやりたくないし、違う人を推薦して欲しいんだけど。

「ええと、他に誰かいませんか……?」

 誰かがチッと舌打ちした。「やりたいならやれよ、委員長」って男子が小さい声で言った。

 そんなことない。僕はやりたくない。でも、誰も意見を出してくれない。

「えっと、じゃあ、主役はこれで決定していいんですか?」

 玲奈さんと杏実さんだけが、声をそろえて「いいでーす」と笑う。他の人はだんまりだ。

 色内先生の方を見る。

 先生は、外の景色を見ているところだった。

「……じゃあ、これで決まりにします」

 しかたない。

 クラスの意見に委員長が反対するわけにいかないし。

 カッカッて、副委員長にしては珍しく乱暴な字で、黒板にみもりさんと僕の名前が書かれる。

 他の役割分担は、杏実さんの「あとは女子だけでやるから男子は関わるな」の一言で決まった。

 でも、よく考えたら僕も男子だ。

 準備のため放課後の教室に残った女子たちの中で、僕だけ浮いている感じだった。慌ただしく準備が進む中で、身を置きどころがなかなか見つけられない。

 ベースが紙芝居ということで、大きな模造紙に背景や小人たちを描いていく。それは絵の上手い子たちがやってくれた。杏実さんもその中に混じって、魔女やお城みたいな難しい絵をサラサラっと描いていた。

 セリフやストーリーは玲奈さんと副委員長。あと更別さんと鹿部さん。当日も彼女たちを中心に小人や魔女の役、ナレーションを担当してくれるそうだ。

 女子全員が積極的に働いてくれたおかげで、紙芝居の方はあっという間に完成してしまう。時間がかかりそうだと思っていたのに、絵の方は杏実さんのセンスを中心に、脚本の方は玲奈さんと副委員長が絵を見ながらアイディアを出して、簡単に完成させてしまっていた。

 うちのクラスは本当に女子が優秀だなって思う。男子としてはもっとがんばらなきゃ。

「えー、これはあんまりお姫様っぽくないかな? ねえ、どう思う?」

 そして、みもりさんはさっきから鏡の前で衣装合わせをしている。

 一度家に帰ったらしく、車でスーツケースを運んできて、その中にいっぱいの服と鏡を入れていた。それを一着ずつ着替えては僕に意見を求めてくるんだ。

「えっと、それでいいと思うよ」

「もう委員長さっきからそればっかり! 真面目に考えてるの?」

「う、うん」

 僕に女の子の服なんてわかるわけないのに。

 でも、一番ヒマなのも僕だった。というより僕たちだけ何もしてなかった。

「これもダメ。なんか可愛くない」

 今の服もお気に召さないらしく、さっさと脱いでしまう。そしてピンクのパンツ一枚になって「次はどれ着てみよっかな?」なんて言ってる。

 みもりさん、最近は僕に裸見られても騒がなくなったよね。慣れって怖い。

「それじゃ主役二人、出番よー」

「あ、うん。みもりさん呼んでるよ?」

「えっ、待って。全然衣装が決まらないよぉ!」

 玲奈さんに「そんなのどうでもいい」と言われ、渋々とみもりさんは白いワンピースに身を包む。

 いつもどおりのそのファッションが彼女には一番似合ってると思うんだけど、僕のセンスはあてにならないので黙っていることにした。

 さて、芝居と言っても、誰でも知っている白雪姫の物語。

 王子の出番は最後までないので簡単だった。

「きゃっ。可愛らしい小人さんたち、こんにちは!」

 主役のみもりさんはいきいきとした演技で、おちゃめに白雪姫を演じていく。

 もともと自撮りや写真映りの上手い子だからか、ちょっとした仕草や表情で可愛さを引きだすのが上手い。セリフ覚えもいいし、演技やポーズも愛くるしく、本物の子役の仕事を見ているみたいだった。

「…………」

 そんなみもりさんを、杏実さんは複雑そうな顔で見ていた。

 かつて『子役で失敗した』という彼女の過去を聞いてしまったばかりなので、僕はなんだか心配になってしまった。

「なに見てんだよ?」

「え、あ、あの……」

 視線に気づいた杏実さんに睨まれる。

 うろたえてしまう僕に、彼女はニヤリと笑った。

「そんな余裕でいられるのも今だけだぞ」

「え?」

 もうすぐ僕の出番だった。

 小人さんたちの泣き声に導かれて森の中で眠っている白雪姫と出会う。

 みもりさんは、二つ並べた机をベッド代わりに横たわっている。

 僕はその寝顔を覗き込む。そして、キスをするふりをして目覚めた彼女にプロポーズする。

 セリフも少なくて簡単な演技だ。

「わあ、なんて美しいお姫様だろう」

 しかし簡単だと思っていた演技も、実際にやってみるとかなり緊張した。セリフも棒読みになってしまって、女子はかなり白けた感じになっていた。

 玲奈さんは片方の眉を器用に上げたまま固まっていて、更別さんが微妙な笑顔を浮かべて、鹿部さんは無表情になっていて、副委員長は自分が恥をかいてるみたいに赤面していた。

 杏実さんだけがけらけら笑っていた。

「はい、やり直し」

「え?」

 そしてようやくキスシーンを終えたところで、玲奈さんからダメ出しがきた。

 これまでどんな下手な演技も見逃してくれてたのに。

「何やってるのよ、ちゃんとキスしなさいよ」

「ええっ!?」

 ただのお芝居でどうしてそんなこと。

 ていうか高齢者の方々の前でそんなことできるはずないのに。

 ザワザワと他の女子たちも落ち着きをなくしていく。

「ほら、こういうのはリアリティが大事じゃない。キスをするって台本に書いてあるんだからちゃんとしないと」

「……でも、童話のお芝居なのに、キスでリアリティなんて」

「あなた、高齢者のみなさんをなめてるの? 数々の恋愛と修羅場をくぐって今まさに人生の最終ストレートをかっ飛ばしてらっしゃる人たちなのよ。中途半端なお芝居してたら怒られるわ。こっちも命がけで演技しないと」

「ボランティアなのに?」

「ボランティアだからよ。命かお金か、どっちかをかけなきゃ本当のボランティアなんて出来ないの。あなた、そんな軽い気持ちで主役やるなんて言ったの?」

「え、いや、そんな……う、うん。がんばるよ」

 主役をやるって僕が言いだしたことではないんだけど、引き受けた以上は全力でやらないと。

 だけど……キスか。本当は好きな人たち同士ですることだと思うんだけどな。

 お芝居でキスしている人たちはテレビとかで観たことあるから、割り切ってできなくはないんだろうけど。

 でも、僕たちみたいな子どもがそんなに割り切りでキスしていいのかな? そもそもR15くらいの制限はありそうな気がするけど。

 みもりさんは、どう思ってるんだろう。

 ぺろって、唇を舐めて眠ってる演技を続けているけど。

「で、でも待って。私たちのお芝居でそこまでする必要ないんじゃないかな? その、高齢者の方たちに猥褻だって思われるかも」

 副委員長が手を挙げて意見を言ってくれた。

 そうだよ。やっぱり猥褻だよね。

 あぁ、よかった。また僕が真面目すぎたのかと思った。

「キスぐらいで? 平気よ。お昼のドラマでももっとすごいのやってるでしょ。ああいうのを一日中見てても何にも感じない人たちなのよ?」

「うぅ……」

 お昼のドラマって僕もかなり前にしか見たことないけど、中学生だった頃のお姉ちゃんが顔を真っ赤にして、「これエッチだから見ちゃだめ」って消していたやつだ。キスよりもっとエッチなことしてたに違いなかった。

 でもそうか。施設の人たちってああいうの見ても平気なのか。達観されてる人たちなんだ。

 副委員長も何も言えなくなって黙ってしまう。

 そして、僕に「ごめんね?」って目配せをする。そっか。僕がキスの演技を嫌そうにしていたから代わりに言ってくれたんだね。

 副委員長の気遣いに感謝して、僕もこっそり微笑む。

 彼女はとても優しいんだ。さっきもみもりさんのパンツに付いた僕の精液を、嫌な顔一つしないでゴシゴシ洗ってくれた。

 しかも「委員長のおちんちんもきれいにしなきゃ」って、ぬるま湯を手に汲んで、僕のおちんちんを出してちゃぷちゃぷと手の上で洗ってくれた。

 恥ずかしいからいいよって言ったんだけど、「これくらいやらせて」って何回もちゃぷちゃぷしてくれて、最後は自分のハンカチで僕のおちんちんを拭いてくれた。

 彼女の親切には、いくら感謝しても足りないくらいだ。僕だってクラスのためにできることはやらないと。

 心配しないで、副委員長。キスならお姉ちゃんと毎日してるから、普通のお芝居よりも自信あるよ。

「じゃあ、もう一回よ。白雪姫を見つけた王子様のシーンから」

「わあ、なんて美しいお姫様だろう」

 眠っているみもりさんを見つけて、小人たちから事情を聞いて、そして「目覚めのキス」をする。

 みもりさんはギュッと目をつむっている。すごく緊張する。

 女子たちがザワザワする。玲奈さんと杏実さんはニヤニヤしていて、更別さんは目をキラキラさせて、鹿部さんはほっぺたを赤くして両手にはさみ、副委員長は顔を赤くして目を伏せる。

 ちゅ。

 軽くキスをして離れた。みもりさんも顔が真っ赤になっていた。

「すとーっぷ」

 玲奈さんはまた僕らの芝居を止めた。

 そして「うーん」と首を傾げた。

「みもりのファーストキスにしては普通すぎる」

 意外なダメ出しだった。みもりさんも真っ赤になって、「普通でいいんだもん!」って言った。

「でもほら、せっかくの記念なんだから、もっとお姫様と王子様っぽいキスじゃないとね?」

「え、お、王子様……う、うん、そうだね」

 記念?

 ハイブリッド芝居の発足記念ってこと?

「それじゃ、私のナレーションに合わせて演技してみて。こういうのは即興性が大事なんだから、主役は恥ずかしがらずに演技すること。あとみんなもちゃんと協力してよ?」

「はーい」

 テイク3の演技が始まる。

 なんだか、ここは重要なシーンになりそうだぞ。教室の空気もピリっとしてきた。ミスのないようにしないと。

「そして王子様は、美しい白雪姫にディープキスをしました」

「えっ?」

「おっぱいを触りながらディープキスをしました」

 唐突なナレーションに素で聞き返したら、余計な演技も追加されてしまった。黙ってやっておけばよかった。

 女子から「きゃあ」って小さな歓声が沸く。副委員長は真っ赤になって唇を噛んでいる。

 ディープキス?

 それ、寝ている女の子にすることだろうか?

 みもりさんも真っ赤になって拳を握っている。でも、寝たふりは続けている。

 玲奈さんのナレーションは絶対だ。恥ずかしいけど思いきって、みもりさんのおっぱいに触る。

「あんっ」

 みもりさんの眉間にしわが寄って、ちょっと恥ずかしい声が出た。でも寝たふりを続けている。次はディープキス。

 唇を合わせる。「くふん」ってみもりが鼻にかかった声を出す。

 ファーストキスって本当かな? こんな風にしちゃって、みもりさんはよかったのかな。

 いいわけないよ。本当は嫌に違いないけど、玲奈さんには逆らえないんだ。

 だったら、せめて嫌な思いが少しでも薄れるように、優しくしてあげよう。