domingo, 16 de junio de 2019

17B

誰もいなくなってから、廊下のカーテンも閉めてしまう。これで教室は密室。僕らのクラスのカーテンが閉まっているとき、誰も近づいてはならないという呪いみたいな噂が学校で広まっている。



「じゃあ、こっち座れ」



 みもりさんの席だ。杏実さんの席の前にあたる。後ろ向きに座って、机を挟んで向かい合わせになる。



「その、頼みって?」



 おそるおそる僕は尋ねる。

 杏実さんは、顔を赤くして頭を下げた。



「……べ、勉強を教えてください」



 彼女の話によると、いや、実際にそうと彼女が言ったわけではないんだけど、どうやら杏実さんは勉強が出来ないことをコンプレックスに思っているようだ。

 考えてみれば玲奈さんは万事に優秀だし、みもりさんもテストでは良い点を取っている。そして杏実さんはいつも悪い点だった。

 そのことを彼女はネタにして笑い飛ばしているけど、じつはそれも悔しさの裏返しだったらしい。はっきりとは言わなくても、モゴモゴと「先生に当たられて答えられないのは恥ずかしい」と言う杏実さんは、なんだかいつもより弱々しい女の子だった。

 玲奈さんも杏実さんと同じくらいか、あるいはそれ以上に授業妨害の達人だけど、先生に当てられたときはさらりと正解を答えている。僕らの年頃の子がそういうのをかっこいいと思う気持ちはわからないでもない。本当は授業を真面目に聞いて答えるのが一番かっこいいと僕は思うけど。

 勉強が出来るようになりたいっていうのは、すごく良いことだ。杏実さんがそう思ってくれていることが僕も嬉しい。

 でも、それなら塾や家庭教師にお願いするのが一番じゃないかなって思うけど。



「そんなこと親に言えるわけないだろ。あたしの家はそうじゃないの」



 彼女にはお兄さんがいるそうで、そっちには小さい頃から英才教育を受けさせているそうだ。そして杏実さんには、元タレントだった母親のコネで同じ道へ進ませるつもりでいるそうだ。

 休みの日にはダンスや歌のレッスンに通っているんだって。子役として映画にちょっと出たこともあるって。

 そんな話、僕は初めて知った。



「玲奈たちぐらいしか知らないし。あんたも黙ってろよ。親の方針で中学卒業するまでは本格活動しないから」



 まずはのびのび育てて、方向性を決めるのはそれからだってことらしい。だけど、あまり言いたくなさそうにしていたけど、セリフ覚えが悪いせいで子役としては失敗っぽいことを言われたそうだ。



「あたし、親には期待されてない子だから。おバカタレントでも目指せってことじゃないかな。まあ、別にそれでも全然いいんだけどさ」



 でも、本当は勉強出来るようになりたいって杏実さんは思っている。

 他人の家庭の事情っていうのはなかなか想像できないけど、自分を変えたいって思う気持ちはすごく理解できる。

 僕も、良い子になりたくてがんばってるつもりだから。



「まあ、とりあえず明日当たりそうなとこだけでも、ちょちょっと……」

「いや、やるなら範囲を丸ごとやった方がいいよ。上手く出来るかわからないけど、僕で教えられることがあるなら全部教えるから。一緒に勉強しよう。ね!」

「お、おう?」



 がんばろう。

 クラスの誰かが困っているなら、助けるのがクラス委員長の仕事だ。

 それが僕をイジメている相手でも関係ない。いや、むしろイジメっ子だからこそ公平に相談に乗るのが正しいクラス委員長だ。



「さ、それじゃさっそく始めようよ」

「えっ、ちょ、ちょっと待って。その前に!」



 杏実さんは、顔を赤くしてノートを開く。



「あたし、字とか下手だから絶対に笑うなよ……」



 確かにお世辞にもきれいな字ではなかった。でも、笑うなんてとんでもない。笑うどころか、落書きだらけで板書すらきちんと写していないことに泣きたいくらいだった。なるほど、これは教え甲斐がありそうだぞ。



「明日のことを勉強する前に、まずは前のページの復習をしてみようか」

「えっ、明日のことだけでとりあえずいいじゃん」

「ダメだよ。前のことをきちんと理解していないと、明日習うところは理解できない。まだ時間はあるから、やっていこう」

「う、うん……お願いします」



 僕もよくお姉ちゃんに勉強を教えてもらっている。最近はセックスすることが多くなってるけど、それでも一緒に勉強する時間はなるべく作るようにしている。

 お姉ちゃんは頭がいいから教え方も上手い。あんな風には出来ないと思うけど、なるべく杏実さんにもわかりやすいように、丁寧に教えるように心がける。基本的なことから順序立てて説明すれば、ちゃんと理解してくれるはずだから。

 杏実さんは、覚えるのに時間はかかるけど意外と真面目に僕の話を聞いてくれた。そして諦めない根性があった。



「えっと……えと、じゃあ、こういうこと?」

「正解! それで合ってるよ」

「えへへっ」



 正しい答えのときは褒める。そうすると杏実さんは本当に嬉しそうな顔をする。

 勉強がきらいな子なんていないんだ。ちゃんと褒めてくれる人がいれば、がんばっているところを見てくれる人がいれば、誰も努力をきらいになったりしない。

 お姉ちゃんが、身をもって僕に教えてくれたことだ。僕も真剣に杏実さんに勉強を教える。ダメな子なんていないってことを知ってほしい。勉強は僕たちの栄養なんだ。

 いつからか杏実さんもすごく真剣になっていて、僕の言うことも「はい」ってちゃんと聞いてくれた。彼女の素直な態度に、僕もついつい指導に熱が入った。

 気がついたら、結構ページも進んでいた。



「あ、もう明日の分も終わっちゃってるよ」

「……本当だ。え、もう? マジだ、すごいっ。委員長、すっげーよ!」

「すごいのは杏実さんだよ」

「え?」



 杏実さんは、きょとんと首を傾げる。



「最初はちょっと遅れてたけど、一度覚えたら次の理解も早かったし。やっぱり元々の頭が良いんだなって思ったよ」

「な、なに言ってんの!? あたしなんて超バカだし!」



 顔を赤くして杏実さんは怒る。

 誤解されたくないし、僕も必死になって言う。



「そんなことないよ。僕は前から杏実さんってすごい発想力してるなって思ってたし、そういうのって努力だけでは身につかない才能だから。学校の勉強には向いてなかったのかもしれないけど、頭はいいよ」

「で、でも勉強が出来なかったら頭悪いってことじゃん。ここ学校だし!」

「今は出来てないってだけだよ。理解力は十分あるんだから、あとは少しの慣れだと思う。杏実さんは、基礎さえ覚えれば一段飛ばしで伸びていくタイプだよ。だから諦めることないよ。ちゃんとがんばっていれば、僕たちが大人になったとき、一番すごくなってるのは杏実さんのはずだから」

「…………」



 杏実さんは、ぽかんと口を開けてしまう。

 そして、みるみる顔の赤さを増していく。首まで真っ赤になってしまう。



「ふ、ふざけんじゃねー!」

「いたっ!?」



 いきなり肩にパンチされた。

 地味にダメージの残る攻撃だ。



「そ、そうやってお世辞使ったって騙されないからな! あんたの写真は消さねーから!」

「いったぁ……お、お世辞じゃないよ。僕は本当に……」

「ウソつけ! じゃ、じゃあ、あたしのこと口説いてるつもりかよっ。ふざけんな、バカ! 誰があんたなんかに落ちるか!」



 口説くってなんだ?

 どうして僕が杏実さんを口説かなきゃならないんだ。



「本当にそう思ったから言ったんだよ。僕はウソなんて言わないよ」



 杏実さんは、「グッ」と唸って口をへの字にする。



「ま、まあ、あんたはウソとか言う男じゃないよな、確かに」



 ぷいっとそっぽ向いて、それきり杏実さんは黙ってしまった。

 ウソは、まあ、時々つくけど。主にこの三人に追い詰められたときに。

 勉強も終わったし、そろそろ帰ってもよさそうなんだけど、なんとなく杏実さんが沈黙したままでは帰りづらいなと思った。



「……ん、でも、誰にも期待されてないのにがんばってもしょうがないし」



 ぼそっと、呟くように杏実さんは言った。

 両親に期待されていない子どもの気持ちなんて、考えたこともなかった。

 うちのお父さんやお姉ちゃんは僕にすごく期待してくれているし、応援もしてくれる。勉強だってお姉ちゃんが教えてくれてた。そのことを僕は当たり前のことだと思ってしまっていたのかもしれない。

 自分がどれほど恵まれていたのか、あらためて噛みしめる。今日うちに帰ったらお姉ちゃんにお礼を言おう。いっぱい愛し合おう。

 そしてその幸福は、自分だけのものにしちゃいけない。クラスのみんなにも分けてあげないと。



「じゃあ、僕が期待する」

「え?」

「僕が杏実さんの努力と将来に期待して、ずっと見ている。それじゃダメかな?」



 またも、杏実さんはポカンとする。

 ひょっとして、さっきから僕は的外れなことばかり言っているのかな?

 空気を読めないってよく杏実さんには怒られるけど。そういうことなのかな。

 杏実さんは、真っ赤になって俯き、また怒るかと思ったけど―――「へへっ」て小さく笑って、また僕の肩にパンチした。

 ぽすんって、柔らかい力で。



「だから、口説くなバカ」



 俯いたまま呟く彼女の小さな声を、僕は聞き逃しそうになった。

 もちろん口説こうなんて僕は考えてない。心配なだけだ。誰にも期待されてないなんて、悲しい言葉だと思うから。



「やっぱり調子に乗ってるだろ?」



 冷やかすみたいに杏実さんは笑う。ずいって、机の上に身を乗り出してくる。



「ちょっとくらいちゅーが上手いからって、すぐ女を落とせると思ってんだろ?」

「そんなこと思ってないよ」

「思ってるよ。『俺はちゅーが上手いから杏実なんてチョロいぜ』って顔してる」

「思ってないってば」

「じゃ、ちゅーして」



 ……え?

 いつの間にかすごく近くなっている彼女の瞳が、じっと僕を見つめている。



「思ってないんだったら、ちゅーして」



 唐突すぎてついていけない。なぜ、僕と杏実さんがここでキスすることになるんだろう。

 そういう流れにいつなったんだ。



「ん」



 杏実さんが目を閉じる。長いまつげかすかに震える。

 えっと……え? これはしないといけない感じなのかな?

 なんだか、強制されてる雰囲気でもないし、断ってもいいような気がするんだけど。

 でも、どこでいきなり怒り出すかわからないのが杏実さんだし。

 キスはもう一度してしまっているし、今なら誰も見ていないし、それに―――なんだか、僕はドキドキしてしまっているし。

 早くここを切り抜けた方がいいと思った。僕まで変になっちゃいそうだ。

 だから、迷いを捨てて唇を重ねた。



「ふ、ん……」



 軽く合わせて、すぐに離す。

 杏実さんは鼻にかかった息を吐いた。



「もっと!」



 少し斜めに顔を傾け、薄く唇を開く。

 深いキスをするときの角度。お姉ちゃんも深いの求めるとき、こんな表情をよくする。



「んっ、んんっ」



 口を合わせて、軽く舌で触れる。

 杏実さんの歯茎にタッチすると、ゆるりと口が開いた。



「はぅ、んんっ…はぁ、ん……ちゅ……」



 お互いの舌を触れあい、なぞりあい、絡ませあう。

 唇を挟むようにして、ちゅ、ちゅっと音を立てて吸い、また舌を重ねる。

 結構な時間をそうしていたと思う。杏実さんの方こそキスが上手くなっていた。お姉ちゃんの方がもっと上手いけど、違うクセがあるというか、女の子にもそれぞれ気持ちのいいやり方があるのか、杏実さんのくちゅくちゅと舌を吸うキスは、なんだか僕に甘えているみたいで可愛いなって思った。

 このまま続けていると、変な気持ちになっちゃいそうだった。



「あ……」



 唇を離す。

 そして顔も離そうとしたら、杏実さんにぎゅっと腕を掴まれた。



「いたっ」



 さっきパンチされたところ。

 杏実さんはビクッとなって手を離し、「さっきのとこ?」と首をすくめた。



「うん」

「……そっか」



 杏実さんは、そのまま僕の腕をさする。

 そして席を立って机を回って、僕の前に立つ。



「委員長も立って」

「え?」

「いいから立って」



 言われたとおりに立つ。杏実さんは僕のシャツの袖をまくって、さっき僕にパンチをくれた場所に顔を近づける。



「んっ……」



 舌でそこを舐め始めた。

 少し屈んで僕の腕を取り、ぺろぺろと子犬みたいに舐めた。

 くすぐったくてゾクゾクする。「やめて」って言っても聞いてくれなかった。ぺろぺろ、ちゅっちゅって。いつまでも僕のそこを杏実さんは舐める。

 シャンプーの匂いがした。彼女の長いツインテールは、いつもさらさらとして良い匂いがする。そして前かがみになっているせいで、Tシャツの胸元から少し肌が覗けてしまう。



「杏実さん……」



 僕が肩に手を触れると、ぴくってなって顔を上げた。

 彼女の顔は、真っ赤になっていた。



「もう痛くないか?」

「え?」



 彼女の真剣なまなざし。

 ぺろぺろ舐めたのは、子犬の治療だったのか。

 僕は「うん」と頷いた。もう大丈夫って言った。

 本当はまだちょっと痛かったけど。さっそく僕はウソをついていた。



「そっか」



 杏実さんは、納得したのかどうかわからないけど、頷いた。

 そして、「じゃ、続き」って言って僕にしがみついてきた。



「ちょ、ちょっと杏実さん!?」

「いいから、続き」



 そういって、つま先立ちになって顔を近づけてくる。

 まだするの?

 なんだか、すごく恥ずかしい体勢なんだけど。杏実さんと僕の身長差が、まるでドラマや映画でキスする恋人同士みたいで、僕の顔が熱くなっていく。



「ん」



 でも、目を閉じて唇を突きだしてくる。キスするまでやめないぞって顔。

 僕はもう一度だけ、その唇に自分のを合わせる。



「んっ……はぁ、ちゅっ、んんっ、はっ、ちゅ、んっ、れろ、んっ、ちゅ、ちゅ、んんっ、れろれろ、んんんんっ」



 きゅっとさらに爪先立って、深く唇を重ねてくる。

 くちゅくちゅと音を鳴らして、深く舌を入れてくる。

 僕たちの体はぴったり合わさっていた。



「ん、足疲れるから、んっ、あんたも支えて」

「え?」

「あたしを抱きしめれ」

「う、うん」



 腕を回すと、びっくりするくらい細い背中だった。おっぱいがない分、薄さはお姉ちゃんの半分くらいかって思うほどだった。

 こんな細い体で背伸びさせるのがかわいそうになので、僕はぎゅっと抱きしめて楽にしてあげようと思った。



「あんっ、んんっ、んっ、ちゅっ、れろ、ちゅっ」



 杏実さんはちょっと驚いたような声を上げたけど、すぐに僕に体を委ねて舌を伸ばしてきた。

 ますます激しくなるキス。僕の手は彼女を支えようと自然に下がっていって、お尻を触ってしまっていた。でも、杏実さんはちょっとくねくねしただけで、僕の手を怒ったりしなかった。むしろそこにお尻を乗せるようにして、ちょんと突き出してきた。



「んんっ、んっ、ちゅっ、いいんちょ、んっ、もっと、んんっ、すごいキス、教えて……んんっ」



 今、一番すごいキスしていると思うんだけど。

 杏実さんはどんどん上達していく。僕の舌を吸ったり、唇を挟んでむにむにしたり、ちゅうって唇を吸って口の中でれろれろしたり。

 僕がしたことは全部返してくる。積極的に動いている。やっぱり、一度覚えると彼女は上手くなる。勉強と一緒だった。僕がお尻を撫でると、気持ちよさそうに揺らしてくる。

 あと、彼女にしていないこと。

 僕は口の中に唾をためた。そして、彼女の中に流し込んだ。



「んんっ?」



 杏実さんは少し驚いて目を開いた。でも、すぐにとろんと蕩けた顔になって、僕の唾をこくんと飲み込んだ。

 また唾をためて流し込む。それを受け止めて、ぐぢゅぐぢゅって口の中で混ぜて、舌に乗せて杏実さんは伸ばしてくる。



「んん、んー、んっ、こくっ、こくっ、ちゅぶ、もっと……んんっ、ちゅ、こくっ。ちゅぶっ、ちゅ、れろ、あん、もっとぉ……んんっ、れろ、れろ、ちゅ、こくっ、んん、あぁ……おいしい……」



 たくさんの唾液の混ざった舌同士の触れ合いは、さらにドロドロして気持ちの良いキスになった。

 僕たちはそのキスにはまる。僕はたっぷりと唾液をためて、杏実さんはそれを飲み込み、口から垂らし、舌を絡めあってぐるぐると混ぜる。

 夢中になりすぎていた。



「はぁー、ちっくしょ。最悪じゃねーか。あの写真どうすりゃいいんだよ?」

「なあ、カーテン閉まってるからやばいんじゃないの?」

「玲奈たちならさっき帰ったよ。それより今後どうするかじっくり話し合って―――」



 天売くんと標津くんだった。

 誰もいないと思ったのか、がらりと教室の扉を開けて、そしてキスしている僕らを見て固まっていた。

 僕もフリーズした。

 言い訳のしようがないくらい、僕と杏実さんはキスをしていた。



「ん……?」



 遅れて気づいたのか、ようやく杏実さんが僕の唇から離れる。

 そして、教室の前で立ち尽くす二人の男子に、眉間にしわを寄せて怒鳴る。



「見てんじゃねーよ、バーカ!」



 天売くんと標津くんは、顔を真っ赤にして、ぷるぷる震えて扉を閉めてしまった。



「じゃ、続き。んっ、ふっ、んんっ、んっ、ちゅっ、ちゅっ、こくっ、ちゅ、んん」



 杏実さんは、何事もなかったみたいにキスを続ける。

 最悪だ。彼らをまた驚かせてしまった。明日謝らなきゃ。



「ちゅ、んん……いいんちょ」

「んっ!?」



 杏実さんが僕の股間に手を当ててくる。

 いつの間にか、そこは固くなっていた。他の男子に見られたばかりだというのに、なんて節操のないおちんちんと杏実さんだ。



「出せよ、シコシコしてやるから。ちゅ」

「いや、でも……っ」

「遠慮するなって、ほら」



 ズボンの中に手を入れられる。あっという間に脱がされてしまう。

 そして剥きだしになったおちんちんを、指でつまむようにしてくすぐってくる。

 そのまま、キスの続きをねだられる。



「んっ、ちゅっ、れろ、んんっ」

「うあっ、あっ、んんっ、杏実さん……」



 おちんちんの刺激が強すぎてキスに集中できない。

 そんな僕をからかうように、杏実さんは舌と唇で器用に攻めてくる。

 気持ちよかった。悔しいけど杏実さんに翻弄されていた。

 自然と、彼女のお尻に触れている手に力が入った。

 指がお股の方にまで食い込んでしまった。



「あんっ!」

「あ、ご、ごめん……」



 痛い思いをさせたかな?

 でも、杏実さんはそうでもなかったみたいで、むしろイタズラっぽく笑う。



「なに? あたしのマンコに触りたい?」

「いっ、いや、そうじゃなくてっ」

「ふふっ、いいぞ。触っても」

「え?」



 するり。

 デニムのショートパンツを脱いでしまう。青とピンクの格子ライン。ふちにはフリルのついた可愛いパンツ。

 それも彼女は脱いでしまった。お尻もワレメも丸出しだ。誰か来たらどうするのって聞いたら、「また追い出してやるよ」って彼女は笑った。



「ほら、触っていいぞ」



 僕の手を、むき出しになったソコへ導く。少し濡れていた。ワレメに沿って指を動かすと、さらに液体があふれてきた。



「あんっ、んっ、委員長、んっ、いいよっ、ちゅっ、ちゅっ」

「んんんっ、杏実さん…っ、んっ」



 互いの性器をいじりながら、キスを繰り返す。

 両手を使って、擦ったり撫でたり器用に杏実さんは僕に刺激を与えてくる。僕も積極的になった方がいいかと思って、ワレメを少し開き気味にして、肉のよじれている部分とか、穴に少し指を差し入れてみたりとか、お姉ちゃんにしてあげると喜ぶことを杏実さんにもしてあげる。



「んんんっ、あ、やっ、いいんちょ、そこっ、やっ、んっ、ちゅっ、ちゅうっ」



 でも、杏実さんはセックスはまだ未経験だって言ってたから、乱暴には入れたりしない。血が出ると大変だから。



「んっ、んんっ、んっ、んっ」



 僕の唾液をごくごく飲んで、舌を懸命に伸ばして、そして手を動かしながら、杏実さんは僕の指に震える。

 まるでセックスをしてみるみたいな、変に倒錯した気分になって僕も声を上げていた。

 外では夕方を知らせるチャイムが鳴りだして、そろそろ学校を出ないと怒られる時間。なのに僕らは止めるタイミングを見つけられずにいた。

 終わりにしなきゃ。でも、やめられない。彼女のよじれた場所は少し固くなっていて、そこを指でくりくり動かすとすごく気持ちよさそうな声をあげる。



「ぷはっ、はっ、はっ、はっ」



 やがて唇を離して、杏実さんは僕の胸に顔を埋めた。

 そして、手の動きが素早くなった。

 シコシコと高速でおちんちんを擦られ、しかも両手で擦られてその刺激に僕も歯を食いしばる。

 それでも杏実さんのワレメをいじるのはやめないように、必死で我慢して指を動かす。



「はっ、はっ、あっ、あっ、いいんちょ、いいんちょっ、やばい、やばいって、もう! やばいィ!」

「あぁっ、杏実さん、杏実さん、出るぅ!」

「あぁぁぁんっ!?」



 びゅびゅびゅって、精液が出てしまった。

 杏実さんの手を飛び出して、彼女のTシャツも汚し、そして顔まで飛んで汚してしまう。

 彼女の唇や舌にまで、それはかかってしまった。



「はぁ、はぁ、はぁ……」



 ぐらりと杏実さんが寄りかかってくる。それを支える力も僕には残ってなくて、床に尻もちをついてしまう。



「はぁ、はぁ、はぁぁ……」



 僕の上に跨る杏実さん。おちんちんの上に彼女のワレメ。精液まみれの顔。

 すごく危険な光景だった。



「ふぅ……どうだ? 満足したか?」



 にやりと杏実さんは笑って、顔や腕についた精液を拭う。

 そして、ぺろりと舐めてしまった。



「あいかわらず変な味だよな」

「うっ、ご、ごめんなさい……」



 服も顔も汚してしまった。また上靴にかけてしまったときみたいに、舐めさせられるんだろうか。

 でも、杏実さんはニコッと笑った。



「いいよ、別に。出るの知っててやってんだし」



 ぺろり、ぺろりと。

 何度も「変な味」って言いながら、子猫みたいに手を丸めて、杏実さんは僕の出した精液をほとんど食べてしまった。

 そして、僕の上に覆いかぶさってくる。

 自慢のツインテールを床につけ、僕の顔とすごい接近をして彼女は笑う。



「なあ、今日のことは玲奈たちにはナイショだぞ?」

「え?」

「そんで、またあたしに教えてくり?」



 くりっと大きな瞳を僕の頬に近づけ、杏実さんはささやく。



「お勉強とえっち、あたしに教えろよ」



 甘い囁き声がくすぐったくて、僕はぞくってしてしまう。

 ドキドキしながら答える。



「エ、エッチはダメだよ。学校の勉強なら教えられると思うけど……」

「ふっ」



 杏実さんはまた怒るかと思ったけど、逆に『言うと思った』みたいな顔して笑った。

 そして、こつんと僕に額をぶつけてくる。



「マジメか」



 これまでの数々のツッコミの中で、一番優しいツッコミだった。







 次の日、よく考えてみたら、あれは杏実さんなりの和解の儀式だったような気がする。

 あれから僕たちは服を着て教室を出たんだけど、杏実さんの機嫌はよかったし、玄関のとこで別れるときも、「また明日な」って言ってくれた。

 普通の友だちっぽかった。それどころか親密な空気すらあったような気がする。

 ひょっとして、勉強を教えてあげたことで何かを挽回できたのかも。一番の乱暴者だった彼女と和解できたのなら、自然とイジメの勢力は衰えていくだろう。

 じつは昨日はイジメの歴史的変化を迎えた一日だったのかもしれないと、僕は期待に胸を膨らませて教室の扉をくぐる。



「んんっ、や、やめてよぉ」



 そして早朝から、玲奈さんと杏実さんに両側から捕まえられ、パンツを脱がされてしまった。



「なんだよ、今日の委員長チンポは朝から元気ねーな。みもり、シコシコしちゃえ」

「うん」



 みもりさんの手が容赦なく僕のおちんちんに触れる。そして、裏側の部分をゆっくりと指でなぞっていく。

 ぞくぞくして、おちんちんに血液が集まっていく。



「ふーん、そういう技もあるんだ。奥が深ぇ」



 耳元で杏実さんが熱心にみもりさんの手技に見入る。全然、いつもの彼女だった。むしろおちんちんに対する好奇心が増している。



(しっかり勉強するから、期待してろよ。にししっ)



 そして僕にだけ聞こえるようにささやいて笑う。

 ひどい。そんな約束はしてないのに。



「え、杏実。なんか言った?」

「んー。委員長の耳をはむはむしてやっただけ。はむー」

「あ、あんっ」



 耳を噛まれて思わず変な声が出た。

 教室の前の方で、遠くから僕を睨んでいた天売くんと標津くんが舌打ちして目を逸らす。

 違う。違うんだよ、二人とも。



「みもり、次はしゃぶってみせてくれよ」

「えっ!? そ、それはやだよ。男子も見てるもん!」

「じゃあ授業中なら? 周りは女子ばっかだし」

「うーん……委員長が声を我慢してくれるなら」

「よし、それなら大丈夫。あたしがちゅーで塞いでおくから」

「や、やめてよぉ」



 女子たちの瞳がなぜかキラキラとして僕に集中し、男子たちがあちこちで舌打ちをして、副委員長が心配そうに指キスサインを送ってくる。

 今日も、杏実さんのイジメは通常営業だった。