domingo, 16 de junio de 2019
17A
本編
17.杏実 〔キス・相互愛撫〕
「おい、委員長」
「え、なに?」
トイレの帰りに男子2名に呼び止められた。
同じクラスの天売くんと標津くん。ちょっと乱暴で怖い子たちだ。
最近では男子から声をかけられるのも珍しいので少し嬉しかったけど、なんだか二人とも怒ってるみたいだった。
「おまえ、最近調子に乗ってるよな」
「え、調子に乗ってるって……そんなことないけど」
むしろ僕くらい調子の悪い子はいないと思ってる。
クラス委員長じゃなかったら、正直、教室を通らないで真っ直ぐ保健室に通いたいくらいだ。
本当、イジメに遭ってるのが他の子じゃなくて良かった。
「こないだなんて、ハーレムごっこしてたんだって? 女子を裸にして」
「ドスケベ野郎だな、おまえ。さいてーだぜ」
「いやっ、あれは違うよ。そんなんじゃなくて」
「じゃあ何なんだよ! いつもおまえ、玲奈とか杏実とかとイチャイチャしてるくせに。せっくすだってしたんだろ!」
「それは……」
言いたくはないけど事実だ。
何て答えていいのかわからなくなる。
「……え、マジでしたのかよ。マジで……?」
「あの玲奈と、せっくすかよ……え、あ、おまえ、杏実は? 杏実ともしたのか?」
「いや、杏実さんとは……その……」
「したのかよ、してないのかよっ。ど、どっちだよ!?」
天売くんは何故か落ち込みだして、標津くんは杏実さんのことを執拗に聞いてくる。杏実さんとセックスはしてないけど、キスとか体のあちこち舐めたりはしている。なんとなくそれは言いづらいことのような気がした。僕自身の恥でもあるけど、女の子にとっても良い噂にはならないだろうし。
全然そのことを隠そうともしないあの三人組(特に玲奈さんと杏実さん)にとっては、今さらかもしれないけど。
「ってことは、みもりともしてるのか……? いや、でも、こないだなんて女子全員を裸にしてたよな?」
「おまえ、まさか、ハーレムとか言って女子全員とえっちしてんのか!?」
「ふ、副委員長も? まさか更別や鹿部ともしたのか!? なあ、なあ、どうなんだよ!」
「やめろよ、マジで! 副委員長にだけは手を出すなよ、オイ!」
「い、痛いよぉ」
首根っこを掴まれて振り回される。
どうしてだろう。僕の巻き込まれている教室内のイジメに、今まで彼らは無関心だと思っていたけど。
でも、どうやら興味は全然違うことにあるみたいだ。むしろ、イジメられている僕を責めるような感じ。
どうしてなの? 女子に体を弄ばれるなんて、喜んでやられる男子がいるわけないのに。
イジメられる方が悪い。
これも、そういうことなんだろうか。
同じ男子なら少しくらい僕の気持ちがわかってくれると思ってたのに……。
「いつまでそんなのに捕まってんだよ、委員長」
「そんなことよりも、みもりのパンツはちゃんと洗ってきたんでしょうね?」
「だ、男子のいるとこで言わないで!」
いつの間にいたのか、三人組が僕らの会話を隠れて聞いていた。
天売くんと標津くんがギョッとして、さらにその発言に驚いて僕を見る。僕は、後ろに隠している濡れたパンツを握りしめる。
さっきの授業中、玲奈さんと杏実さんに後ろ手を掴まれ、そしてみもりさんに手コキをされていた。
隣の鹿部さんはずっと僕の様子を見ていた。更別さんもだ。少し離れた席で副委員長も見ていたし、周りの女子はみんな見ていた気がする。
最近、また玲奈さんたちの提案によって一部の席替えがされていて、今度は僕の周りから男子は消えて、後ろの方の席には女子ばかり集まるという変な席順になっていた。
さすがに男子から反対意見もたくさん出たんだけど、1時間ばかりHRやって最後に先生が、「よく聞いてなかったんだけど、ようするにクラス委員長がそうしたいってことなのよね? クラスをより良くするためだから仕方ないのよね? うん、じゃあ委員長の言うとおりにしましょ」と言って、玲奈さんたちの提案どおりに席を変えてしまったのだ。
僕は何も言ってないんだけど、そういうことでクラスが意見がまとまるんなら良いのかなと思った。先生がおっしゃっているんだし。
そのときも天売くんと標津くんにパンチされた。前の方へ移るのが気に入らなかったみたい。
で、新しい席順に変わって、今日も授業中に射精させられた。
いつも僕の精液はみもりさんがお口でキャッチしてくれてるんだけど、今日は杏実さんの思いつきで、みもりさんがパンツを脱いでそれでキャッチするっていう作戦になったんだ。本当に杏実さんは変なことばかり思いつく。
その汚れたパンツはみもりさんがそのまま穿こうとしたんだけど、玲奈さんが「ちゃんと洗って返しなさいよ」と、僕に命令したんだ。
みもりさんは「そんなのいいよ」と言ったんだけど(僕の精液まみれのパンツの方がノーパンで過ごすよりマシだからだろう)、玲奈さんに「みもりは本当に精液大好きよね」とからかわれて、結局、僕が男子トイレで洗って返すことになったんだ。
本当に見事なイジメの連鎖だよ。
杏実さんの奇抜な発想力と、それを見事なイジメに昇華できる玲奈さんの策略があれば、いずれ天下を狙えるかもしれないと感心したくらいだ。
「ていうかおまえら、あたしらに気があるの知ってたけど副委員長も狙ってたのかよ」
「節操ないわねー。だからモテないのよ」
「うぅ……」
杏実さんと玲奈さんにからかわれて、天売くんと標津くんの顔が赤くなる。
でもこの二人、そうだったのか。玲奈さんや杏実さんのこと好きだったんだ。
なるほど、だから僕に変な絡み方してたんだね。言ってくれればいいのに。
僕と彼女たちの間にそんな感情は全然ない。エッチなこともイジメでやられてるだけだって言えば、わかってくれることだったのに。
「男のやきもちなんて、みっともないわよ」
玲奈さんがさらりと髪をかき上げて言う。
天売くんと標津くんは、かわいそうなくらい真っ赤になっていた。
「でもまー、委員長だけっていうには確かに不公平だしな。よし、おまえらもチンポしゃぶってやるよ。あたしと玲奈の二人で」
「え?」
杏実さんの発言に、僕や天売くんたちだけじゃなく玲奈さんまできょとんとした。
「ちょっと、杏実。どういう―――」
「いいからいいから。あのな……。よし、おまえらついてこい。女子トイレでしようぜ」
玲奈さんの肩に腕を回して、ゴニョゴニョと何か囁いてから、みもりさんも引き連れて杏実さんは僕らにも来いと誘う。
天売くんと標津くんは「マジ?」と顔を見合わせ、そしてニタっと笑って彼女たちについていく。
え、本当に? 杏実さんたち、他の男子にもあんなことするつもりなの?
「ま、待ってよ。それはよくないよ。悪いことだからやめようよ」
僕がされるのならまだ我慢できる。
でも他の男子まで彼女たちのイジメの犠牲になったり、性が乱れることはクラス委員長としても看過できない。
「なんだよ、委員長もやきもちか?」
杏実さんと玲奈さんが振り返ってニヤニヤと笑う。
天売くんと標津くんまで、僕にいやらしい笑みを浮かべる。
そんなんじゃないのに。
「わ、私はしなくていいんだよね? 杏実ちゃんと玲奈ちゃんだけだもんね?」
みもりさんは僕と杏実さんの顔をチラチラと見ながら言う。
「いいから、委員長も黙ってついてこいよ。別にいつものことじゃん?」
彼女たちにとってはいつものことかもしれないけど、僕にとっては大事件だった。杏実さんと玲奈さんが、他の男子にフェラチオをする。イジメの輪が外に広がる。それは最悪の事態だった。
「やめようよ、二人とも。天売くんと標津くんも、行かない方がいいって」
「いいから早く委員長も入れよ。それとも、外で見張りしてくれんのか?」
杏実さんが手招きする。積極的には入りたくない女子トイレだけど、天売くんと標津くんは僕の制止を聞かないで入ってしまったし、僕も追いかけて中へ入る。
玲奈さんと杏実さんは二人を並ばせ、その前にしゃがんでいた。
「じゃ、出して」
「あたしたちがしゃぶってやるよ」
天売くんと標津くんはゴクリと息を飲み、何度も顔を見合わせて、躊躇しながらも女子の前でズボンとパンツを下げる。
固くなってる二人のおちんちん。なんとかしなきゃと言いながら何も出来ない僕の前で、玲奈さんと杏実さんは「ちっちゃいじゃん」なんて言って笑ってる。
確かに僕のよりも小さい感じだけど……そんなことは問題じゃない。
玲奈さんと杏実さんにとってはいつものことかもしれないけど、やっぱり心の通ってない男女がこんな触れあいをするのは間違っている。僕自身が何度もその間違いを犯しているからこそ、他の人には道を踏み外して欲しくない。
でも、止めようとした僕にみもりさんが目配せする。「しー」って、人差し指を口に当てる。
なんだか、変な雰囲気だと思って僕も口を閉ざしてしまう。
玲奈さん杏実さんが、揃って「ぺろり」と唇を舐めた。天売くんが「はふぅ」って鼻息を吐いて、標津くんは「あう」って言って、先っぽから透明な汁を出した。
二人とも顔が赤くて、目まで充血していた。見ててかわいそうになるくらい緊張していた。
玲奈さんと杏実さんの唇がおちんちんに近づいていく。キスするみたいに唇を突きだしていた。天売くんと標津くんが「あぁ……」って感極まった声を出す。
そして―――さっと二人がどけた瞬間に、カシャっとシャッター音がした。
みもりさんが、スマホでパシャパシャと天売くんたちの姿を撮影していた。
「な、なにしてるんだよ!?」
二人が慌ててズボンを上げる。みもりさんのスマホを杏実さんが受け取り、画像を確認して玲奈さんとニヤリと笑う。
「おっけー、バッチリすぎる。これ拡散したら大ヒット間違いなしだぜ」
「なな、なんでだよ!? ちょ、消せよそれ!」
「いやよ。面白いじゃん。後ろにもちゃーんと『女子トイレはきれいに使いましょう』って書いてあるし。どう見ても変態。ド変態。マジうける。あははっ」
「さ、さいてーだぞ、おまえらッ!」
「はーい、さいてーいただきましたー」
「この写真バラまかれたあとの、おまえらの人生の方が最低だけどな。いひっ」
天売くんと標津くんと、あと僕の顔も青くなっていた。
ひどい。僕のときと同じやり方だ。こうしてイジメハザードを拡散していくんだ。僕だけで食い止めるつもりだったのに、ぼやぼやしている間に天売くんと標津くんまで犠牲にしてしまった。
クラス委員長失格じゃないか……。
「とりあえずこの画像はいろいろ分けて保存しとっから。いつでも発射できること忘れるなよ」
「私たちに逆らったら、どうなるか理解できた?」
「あと、委員長はあたしらのもんだから。勝手に手ぇ出したら学校的に抹殺してやっからな!」
がしっと肩に杏実さんの腕を回される。杏実さんの方が背が低いからちょっと変な格好になってるけど、「いくぞ」と言われて引きずられる。
「あの、天売くんたちは……?」
「ほっとけ」
女子トイレでボロボロ泣いてる二人に、なんて声かけていいかわからず、「ごめんね」とだけ言って三人組と一緒に出ていく。
どうしよう。僕がなんとかしなきゃ。クラス委員長として、土下座してでも彼らの名誉は守らなきゃ。
「ね、ねえ。さっきの写真、消してあげるわけにはいかないかな?」
おそるおそる、まずは僕の顔のすぐ隣にある杏実さんの横顔に話しかける。
あいかわらず可愛い顔立ちだけど、内面に小悪魔を飼っていることを知ってるだけに怖い。でも僕が、がんばらなきゃ。
「ん? いいぞ」
と、意外にも素直に杏実さんは頷いた。
「あー、でもみもりはああいうのコレクションしてるから、消したくないって言うかもな」
「してないもん! 消していいの? 消すよ? 私だってこんな気持ち悪いの保存したくないもん」
「じゃ、消すべー」
あっさりと写真は消去された。
僕も拍子抜けだった。
「でも委員長は、写真はまだ私たちが持ってるふりしなさいよ」
「絶対バラすなよ? あいつらにまた何かされそうになったら、あたしらに言いつけるって言え」
すぐに理解できなくて、しばしフリーズした。
え、つまり、天売くんたちは学校的に抹殺されなくて済むってこと?
たとえ写真がなくなったことを教えてあげることはできなくても、彼らの恥ずかしい姿を全世界に発信されることはこれでもう永久にない。
安心した。本当によかった。彼女たちの中にもちゃんとあった良心に感謝した。
そして、この機会にあらためてお願いしてみようと思った。
「じゃあ、ついでに僕の写真も消してもらっていい?」
「ダメに決まってるでしょ」
「調子に乗るなバカ」
「全部が永久保存だもん。これからも成長を追うもん」
そういえば、僕はすでに学校的に抹殺済みだもんね。
調子に乗っちゃったよ。
そしてその日、放課後になるとすぐに玲奈さんは席を立った。
「げ。玲奈、もう帰んの?」
明日、算数の回答が当たりそうだという杏実さんは(色内先生は全員が当たるように順番に当てていくタイプだ)、教科書と格闘しながら焦っていた。
「親が早く帰るからお外でご飯だって。面倒くさいんだけど。ごめんね、バイバーイ」
ひらひらと手を振って玲奈さんは帰っていく。
みもりさんは「ピアノのレッスンあるから」と言って同じように急いで出て行った。
「マジかよ……じゃあ誰があたしに算数教えてくれんだよー」
杏実さんは、ツインテールの頭を抱えて机に突っ伏す。
彼女は算数が苦手だった。というより体育以外の勉強全般が得意ではない。典型的な『元気があってよろしい』タイプの子だった。
でも普段あれだけ授業妨害ばかりしているのに、先生に当てられそうだからって、真面目に予習しているあたりは意外な感じがする。良いことだとは思うけど。
とにかく三人組が解散したなら今日はチャンスだ。早く帰ろう。
と、立ち上がったところでシャツの裾を掴まれる。
杏実さんが、涙目で睨んでいた。
「頼みがある、委員長」
「は、はい」
「ちょっと座って待ってろ」
「うん。で、何を……?」
「いいからそこで待て!」
結局、他の子たちが帰るまで待つことになった。
早く帰りたかったのに。
「カーテン閉めるぞ」
「う、うん」